山ヤ再開

山ヤ再開

還暦を向かえて「そこに山がある」ことに気付く

太陽と緑の道コース№15 をパトロールして思うこと

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 はじめに

神戸の秘境と呼ばれる山域です

この山域を愛した多田繁次は著書「北神戸の山やま」の中で「神戸の秘境」と紹介しています。多田の一文は、摂津と播磨の国境にあたる志久峠の標識に紹介されています。過日訪れると、”神戸一の峠”と称賛する文章は、朽ちた案内板にかすかに判読できるまで劣化が進んでいました。今日も下山ルートとして選んだ道は、この峠道の一部です。このルートは昔の幹線道です。実際に歩いてみると、石峯寺から始まり谷上至る生活路をその文化背景なども含め「神戸一」と評価したのだと思い当たります。後世に残したいと思う自然には、そこを愛した人々が歩いてきた道があり、脈々と維持してきた思いが連なるからなせるのだと思います。

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高低差が少ないコースです

「太陽と緑の道」の定例パトロールをいつしようか?思いながら、チャンスを逸していました。コロナの影響もあるが、梅雨の長雨が続いていることと、所属会の例会担当などがあったため延びていました。

今日は沢例会が中止となったため、急遽歩くことにしました。ところが途中で携帯が鳴り、昼から仕事が入ってしまいました。結果、ゆっくりと出来ずに下山。本当は丹生山系をブラブラと徘徊していたかったのです。

裏六甲に位置するこの山域は、高低差があまりなく、静かで植生が豊かなところです。急峻な表六甲に比べ急登はありません。市営地下鉄が谷上まで伸び、アクセスが良くなりました。手軽にハイキングを楽しむには良いコースだと思います。

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スタート地点の神鉄大池駅の標高は350m、ゴールの肘曲りの標高は450m、帰りの最寄り駅神鉄箕谷駅は250m。初めての方にも無理のない高低差のハイキングコースです。

「太陽と緑の道」としての課題

今回のパトロールは神戸市さんより

「withコロナ」時代における野外活動の推進を目的にして、コースの利活用策を検討する

ための資料作りを目的としたものです。

私がボランティアパトロール員として担当しているコースは

コース№15大池~天下辻~黒甲越~肘曲り(約7.4㎞)です。3月から月に一度歩いています。そこで、感じたことは”ため息が出る程、気持ちのいい山域だ”と感じる部分と、一部にモトクロスの通行被害や心無いゴミの不法投棄などが目に入ってくる現実があります。自然歩道が制定されてから50年近く経ち、この山域を守るためには何が必要か?ボケかけた頭で考えてみました。

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コースを歩いて感じたこと

7月12日(日)曇り後晴れ

コースタイムは大池駅より肘曲りまでは2時間半、箕谷駅までは3時間半の行程です。№15の距離は約7.4キロ、最寄りの駅までの歩行距離は約12キロです。

今回歩いて、神戸市のHPに注意喚起されている点を確認します。

降雨、積雪時、また雨の後などには、危険なコースもあります。無理をせず、次の機会を待ちましょう。

神戸市:自然歩道「太陽と緑の道」

このコースでは以下の個所で”降雨後の冠水、渡渉個所の発生”があります。歩かれるときは注意してください。

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これハイキング道です。

コースの見どころポイント

大池聖天

昭和15年に生駒聖天を勧請したお寺で、正式名は宝成山興隆寺七福神の福禄寿と弁財天が祀られている。

昔はパワースポットだったようです。コースからそれますが、裏山に奥の院として廃寺が残っています。

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兵庫カントリー 倶楽部

このコースの三分の一は兵庫カントリーへのアクセス自動車道を歩きます。車道脇には不法投棄、ポイ捨てのゴミが散見されますが、この車道添いには野草が多く写真撮影のポイントになります。またグリーン越しに眺める、北摂や六甲の峰々は、コース最高点に近く気持ちの良い景色です。

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地質

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地質の専門家ではないの詳しいことは言えませんが、花崗岩でできた六甲山系とは明らかに違う地質で形成されていることが分かります。

コース近くには古々山断層が走り、有馬層群、神戸層群が確認できるようです。今日も石を拾っているハイカーに出会いました。珍しい石が見つかるようです。また、丹生山系を縦走すると山域ごとに違った岩石が確認できると聞いたことがあります。地質については、これから勉強していくことにします。

https://www.hp1039.jishin.go.jp/danso/Hyogo8/figures/f2-2.jpg

神戸層群:新生代第三紀始新世末から漸新世にかけて形成された地層。保存の良い海生・淡水貝化石や陸生植物の葉や材化石が産出することで広く知られる。

植生が豊かです

四季折々の草木と花々に、訪れる度に出会います。これは六甲山系よりも多いと思います。『花の百名山』を書かれた田中澄江が、当地を訪れて都会の近くに残る自然に驚かれたと回想されたことが分かります。

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カメラを持ったハイカーの方が、熱心にシャッタを切っていました。お尋ねすると「トラノオ」を撮っておられ、他にもいろいろと被写体があると語っていました。

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これはギボウシの仲間です。

下山後の見どころがある

下谷上の農村歌舞伎を初め丹生山田地域の歴史文化に触れることができます。

www.city.kobe.lg.jp

柏尾台の上にある標識で進路を原野にとると

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・柏尾台の里山クラブ

・みのたにグリーンスポーツホテル、「銀河の湯」

少し足を伸ばすと無動寺、丹生宝庫で国の重要文化財に出会うことができます。

コースの問題点

魅力と裏腹に課題も抱えています。これは国立公園として整備されている表六甲山系と違うところです。

モトクロスの轍が醜い

この山域全体にモトクロスバイクや四輪の轍が広がっています。「公道」として通行が許されていると伺ったことがありますが、一部には明らかに私有地に侵入しているケースも見受けられます。

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コース唯一のロープ箇所はモトクロスにより深くえぐられた轍を通過するために設置されています。自然災害による道の崩落ではなく、バイクが優先的に通過すらために危険な選択をせざるを得ない状況です。

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滑りやすい地面と跳ね上がる泥水に注意する必要があります。

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そして、泥をはね上げるため看板も無残な有様です。

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今日も、爆音を轟かせて3台のバイクが横をスピードを上げてすり抜けていきました。ハイカーは明らかに弱者です。

HPに上がっているPDF地図と現地を見比べると、モトクロスの轍あり箇所が移動していることが確認できます。

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以前モトクロスの轍のあった箇所は、コンクリートや砂利で道が整備されています。車が通行できる道幅に整備されているところみると、工事に伴って整備されたのかもしれません。入り口部分に柵がされています。そして、後で触れる不法投棄があります。車道ができると不法投棄が起こり、”ゴミがゴミを呼ぶ”状態になります。ハイカーが残すゴミとは質量が全く違います。

不法投棄

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これは以前にも触れました。夏場になると草木が茂りカモフラージュしてくれます。兵庫カントリーへの車道も含め、初めて訪れて目にすると何だかな?とがっかりした気持ちにさせられます。毎回、目に付くゴミは回収していますが、イタチごっこに過ぎません。

市の環境局の方は「私有地なので土地所有者が処分していただかないと」との見解でした。パトロールの度に拾えるゴミを集めていますが、この行為は罰せられる行為なのかと?不安になります。

通報プレートの充実

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この標識にある”つうほうプレート”は判読できなくなっています。コース№15上はこの後、終点の肘曲りまで設置は確認できませんでした。安心安全なコース管理を考えると、要所には設置されてると心強いと思いますが、コース上は携帯電話が使えますので緊急連絡には不便ないと思います。都市に近い山域で高度差もないのが幸いしています。

しっかりとした地図がない

市販のガイドマップはありません。ハイカーはヤマレコやYAMAPのログを利用するか、神戸市のHPからPDFを印刷して利用することになります。このイラストマップPDFは曲者です。

まず、コース名称の黒甲越は通過しません。以前は通過していたが、付け替えられたままになっているのだと思います。標識の位置はマーク通りではありません。ただ、これも更新作業が出来ていないだけで、実際に歩くと多くの標識が設置され迷うことはありません。

イラストマップにはエスケープルートがしっかりと書かれています。GPSが利用できる便利な時代ですが、プリントアウトした地図は初めて歩かれる時には準備したほうが良いです。

ボランティアパトロール員の役割

現状はコース維持のために草刈り、倒木除去、ゴミ拾いなどが主たる任務です。しかし、見どころと課題を見直すと現場を歩いている立場から果たさないといけないことも見えてきます。

私はもっと山の知識を持たないといけないと思いました。地質や歴史、樹木の名前など調べていくようにします。応えられないと山の先達とは言えません。

所属会のメンバーと歩く例会を増やそうと働きかけています。やはり、訪れて歩かないことには魅力は理解できません。そして、一人でも再訪したいと思う人が増えてほしいと願っています。

最後に、胸を張ってコースの魅力を紹介するために、できることをしっかりとやっていこうと思っています。

 

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